ルーカス批判
【るーかすひはん】
Lucas Critique
1995年にノーベル経済学賞を受賞したR.ルーカスによる、伝統的なケインズ理論への批判。主張の要点は、「企業や家計は、現在の状況に加え、将来の予想まで考慮して自己の行動を最適化している。将来の予想が変われば、行動様式も変化する。行動様式の変化は、足元で観察される経済変数間の関係や影響度合いも変えてしまう。したがって、現在観察される、あるいは過去の経験則に基づいた経済モデルに基づいた経済運営を行っても有効に機能しない」というもの。一般的には、「あらかじめ予測された政策は無効」とする命題で知られる。伝統的なケインズ理論には、価格が硬直的であることや、消費は所得の関数といった前提があるが、いずれも企業や家計のどのような行動様式を前提としているかという理論的な裏づけがない(これを、ミクロ的基礎づけを欠いていると言う)。したがって、ルーカス批判に反論する術を持たない。1970年代のスタグフレーションの勃発によって既に信頼を失いつつあったケインズ理論は、ルーカス批判の登場により、しばらくの間、ほとんど顧みられない状況が続くことになる。ルーカス批判後、ミクロ的基礎づけを持たないマクロ経済理論は過去の遺物となり、ミクロ的基礎づけを持ったマクロ理論の研究が急速に進んだ。また、マクロ経済学とミクロ経済学の垣根が低下し、学問的な統合が進んだ。ルーカスの主張を元に発展した新古典派系の一派を合理的期待学派という。
【参照キーワード】
→合理的期待仮説
→ケインズ理論
(c)2009 A&A partners/TMI Associates/ Booz&Company(Japan)Inc./ Meiji Yasuda Insurance Company
| 日経BP社 「日経ビジネス 経済・経営用語辞典」 JLogosID : 8516938 |