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▼焼きガキなどカキ産地の伝統料理


「カキむき小屋ではこれをよく食べます」といって、畠山さんが焼きガキを作ってくれた。といってもストーブの上に殻ごとのカキをのせるだけ。やがてジュウジュウと音をたてながらカキの汁が沸騰すると、ヤットコで上の殻を取りはずす。身をつまんで、フーフーいって口に放り込む。海水のほどよい塩味が絶妙な調味料になって、軽いながらも深みのある味に仕上がっている。またたくまに数個が胃袋の中に消えていった。
次はカキの上の殻を取り除いて、味噌をのせて焼く。味噌とカキの相性がまことによろしい。さらにカキ鍋と、カキむき小屋の晩餐は続いた。「ここらのカキ鍋は、カキ以外のダシは一切とりません」と畠山さん。その鍋をのぞくと大きなカキがどっさり。これならほかのダシは必要ない。具はほかに白菜と豆腐、シメジだけ。味つけは塩だけなのに、海の幸と里の幸の渾然一体となったその汁の味には、感心するばかりだった。




東京書籍
「旬のうまい魚を知る本」
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