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▼周防灘産は一目で見分けられる


周防灘トラフグのみを扱っているフグ料理店が、山口県柳井(やない)市の「魚心かみのせき」。なぜ周防灘にこだわるのかを、店のオーナーでフグ仲卸しでもある浅海努さんにたずねたことがある。
周防灘は潮が速く小魚や小貝などフグのエサが豊富な海だ。それでうまいフグが育つ。また私が仕入れている上関町(かみのせきちょう)室津(むろつ)のフグ漁師は、釣り上げたあとの処置が上手だから質がよい。色がピンク色を帯びていて、私らプロが身を見れば、一目でほかのものとは見分けられる」。嘉永2年創業の仲卸しのいうことだから、素直に納得してしまう。
浅海さんは内海ものを漁師から買い入れると、自社の水温調整付き水槽に2、3日生かしておく。そうすることでフグの腹の中のものが吐き出され、また精神的にも安定して、身に締まり弾力性が出てくるという。「この内海フグを三枚におろして、晒に巻いてほぼ1日寝かしておきます。そうやってほどよく水分をのぞいてうまみを引き出してから調理にかかるんです。ただし寝かせる時間も、水槽に生かした時間との兼ね合いで微妙に変えています」。
この店の菊盛りは厚めの一枚引き。噛み心地がよくうまみたっぷり。これを食べると、フグの刺身は薄いほどうまいというのはうそだと思えてくる。




東京書籍
「旬のうまい魚を知る本」
JLogosID : 14070279