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▼獲ったカジキで船が沈みそうになった


日本近海で獲れるカジキは、多くがマグロ延縄漁による。それに比べると量はごく少ないが、豪快な突きん棒漁法でも漁獲される。カジキ発見すると漁船を寄せて、大きくせり出した舳先(へさき)に立った漁師が、海面に現れたカジキに手銛(てもり)を突き立てる。それからの漁師とカジキの闘いは長時間に及び、まさしく日本版『老人と海』の世界だ。
静岡県下田市須崎(すざき)に元突きん棒漁師の土屋文男さんをたずねて話を聞いたことがある。
「若い頃は突きん棒名人といわれたもんだよ。自分は三宅島沖でよく突いていた。始めたのは昭和39年だったかな。当時は小さな船でね、2日も3日も沖に居続けマカジキをのせるから、船が沈みそうになったこともあるなあ」
当時の銛はカシの木で作っていた。木目のそろったのは少なく、20本、30本買っても気に入ったのは1本だけだったという。弘法は筆を選ばないが、突きん棒漁師は銛を選ぶ。なにしろへたをすれば、例の槍で梶木を突き破られますからね。




東京書籍
「旬のうまい魚を知る本」
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