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▼カメノテ獲りを船上から見学


翌朝、「たきもと」の庭から磯へ下りると、勝さんが小船で待っていてくれた。「干潮で磯が海面から出る頃がカメノテをとりやすいんだ。だから急ぎましょう。磯づたいでも行けるんだが、なれていないと危険だから船で行きます」。
沖の岩礁へ向かって5分ほど走る。「ほら、見えるだろう。あれがカメノテだよ」。指さす方向を凝視しても、大きな岩見えるばかりだ。船が数メートルまで近づいて、やっと大きな岩と岩のあいだに、サボテンのような生き物が波間に見え隠れしているのを発見した。教えられなければ、まず見つけることはできなかったろう。漁師の視力のよさにあらためて驚くと同時に、わが視力の衰えに嘆くばかりだ。
中村さんが岩にひょいと飛び移った。孫がいるから家族からはおじいさんと呼ばれているのに、さすが現役漁師、その身軽なこと。足下を確かめながら、ノミでカメノテをはがして、軍手をはめた手で受け止める。と書けば簡単そうだが、足場が悪いから、素人ではとてもこうはいかない。15分ほどでザルに半分ほどを獲って、カメノテ漁を終了した




東京書籍
「旬のうまい魚を知る本」
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