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▼気取らない味だが、けっして凡庸ではない


「尾にトゲがあるので気を付けてください。刺されると素人では絶対に抜けない。医者に麻酔をかけて処理してもらうことになるよ」と遊佐さんの注意が飛ぶ。網上げが終わると、漁師の一人が船上でクロカスベのヒレ部分を包丁で切り取った。そのヒレだけを持ち帰り、遊佐さんの民宿「後山荘」で煮付けを作ってもらった。
背の黒い皮をむき、醤油味で煮付ける。臭み消しに根ショウガ使うこともあるそうだが、とりたてのクロカスベにはそれを必要としない。気取らない味ではあるが、けっして凡庸ではない。軽妙、洒脱、成熟、野趣、生気、この種の機微の入り組み方をほめたい。それになによりも、軟骨を噛み下すジョリジョリという歯ごたえと身の弾力性小気味いいんだなあ。
給分浜クロカスベは6月と7月によく網にかかる。




東京書籍
「旬のうまい魚を知る本」
JLogosID : 14070411