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▼瀬戸内海の伝統漁法、撒き釣りの妙味


瀬戸内海のほぼ中央に位置する白石島で、スズキのエラ洗いを見物して胸高まらせたことがある。漁師でもある民宿「中西屋」の主人夫婦が、「スズキ漁に出船するから一緒に乗りませんか」。小さな漁船で10分も走ると船を止めて手釣りの準備。一人で2本の道具を使う。1本の釣り糸には撒(ま)き餌(え)の小エビを数尾入れた小さな網カゴを結びつける。もう1本がエサの小エビをかけた2本バリ。この2本の道具を巧みに使って魚を誘うのが瀬戸内海の伝統漁法・撒き釣りだ。
「きた!」と弾んだ声が飛んだ。沖を見つめると、ハリがかりしたスズキが海面から姿を現わして大きくジャンプ。ブリなど多くの魚はハリがかりすると深場に向かって走るが、この魚は海面から大きく跳んだり、急に向きを変えて突っ走ったりする。釣糸を強引にとりこめば糸が切れるし、糸をゆるめればエラ洗いの一発で切られてしまう。一瞬たりとも気を抜けない。この緊張感が多くの釣人を惹きつけるのだろう。
この日中西屋の夕食でスズキの姿造りを堪能した。




東京書籍
「旬のうまい魚を知る本」
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