100辞書・辞典一括検索

JLogos

19

▼ケムシカジカの味噌汁で味のハーモニーを楽しむ


月浜の漁師さんたちがもっとも好むケムシカジカ料理は、なんといってもボッケ汁とも呼ぶ味噌汁だ。「苦玉のほかはすべて利用する。頭やあらはもちろん、エラも胃袋も肝も尾っぽも汁に入れるよ」と自ら包丁をにぎる鈴木さん。エラはそのまま、胃袋は内側のヌメリを包丁でこそげとり、水洗いしてから細く切る。ほかは「銀杏切りの大根だけ」という味噌汁だ。
汁を一口すすると、各部位から絞りだされた滋味が、みごとなハーモニーを奏でている。漁師流に頭や中骨についた身をしゃぶり食いすると、深海でしか育むことができないであろう玄妙な味わいが、いかにも満ち足りた気分にさせてくれるのだ。ひょろひょろした皮と身のしゃぶり心地がまたうれしくて、幸福感にどっぷりつかってしまうのだ。




東京書籍
「旬のうまい魚を知る本」
JLogosID : 14070522