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荒川扇状地
【あらかわせんじょうち】


県北西部,荒川中流部に広がる扇状地で,古い洪積扇状地と,新しい沖積扇状地に分かれる。前者は関東ローム層におおわれ,扇頂部の大里郡寄居(よりい)町付近の標高は100m,扇端部の深谷(ふかや)市街地付近で50m,沖積扇状地との間には数mの崖がある。この扇状地は扇状地面が形成された後の隆起に伴い,荒川によって開析され,左岸の櫛挽(くしびき)台地と右岸の江南台地に分断されたものと考えられているが,しかし,両者の形成時代は異なる。左岸の櫛挽台地は武蔵野面が主体をなし,荒川沿いは洪積期末の立川面より成るのに対し,右岸の江南台地はこれより古い下末吉面より成る。第2次大戦前までは,これらの台地上は到るところ平地林で,その間に開墾された畑も旱害を受け易かったが,現在は養蚕・酪農・花木などの生産が盛んになった。沖積扇状地は熊谷(くまがや)市の西端川原明戸から川本町の東端明戸付近(標高50m)を扇頂として東方に広がり,熊谷の市街地東方標高25m付近が扇端となる。ローム層を欠くこの扇状地は,慶長年間伊奈忠次によってつくられたといわれる大里六堰用水の灌漑水域で,水利に恵まれ,水田も多く開かれて,砂利資源も豊富であった。また,扇端部の豊富な湧水は,古代における条里制水田開発の好条件となり,熊谷市から行田(ぎようだ)市にまたがる標高20~30mの低地の池上・大塚・下池守・小敷田などには条里遺構も残っている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7047638