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子浦湾
【こうらわん】


伊豆半島最南端,賀茂郡南伊豆町西部にあり,富士箱根伊豆国立公園に含まれる風光明媚な小湾。南伊豆地区の名勝地である石廊崎(いろうざき)と波勝崎(はがちざき)との間にあり,南北約1kmの小規模湾。湾口部の水深20~30m,湾口から5kmまで大陸棚が続く。子浦湾は,三方が200m前後の山地で囲まれ,湾奥の南東側に妻良(めら)港,北西側に子浦港があり,湾内の浜は遠浅で,以前は沿岸漁業中心の漁村であったが,最近は海水浴場としてにぎわっている。昭和47年マーガレットラインの愛称で呼ばれている南伊豆有料道路が開通するまでは,妻良・子浦に至る交通路は悪く陸の孤島であった。自然的制約を受けているにもかかわらず,妻良・子浦は,古くから開け,江戸期には,江戸と大坂を結ぶ回船の日和待港(風待港)として,遠州灘を挾んで志摩の的矢浦(まとやうら)とともに栄えた。妻良は西風には弱いが東風に強く,子浦は逆に西風に強い。子浦には徳川14代将軍家茂が使用したといわれる駕籠もあり,当時繁盛した船宿も往時を忍ばせている。妻良・子浦は,江戸と上方双方の文化が伝わり,特異な地域文化を作り出している。妻良の盆踊りや氏神祭礼の儀式の中にその名残を伝えている。現在は,漁業のかたわら,民宿も激増し,冬場の避寒地,夏場の海水浴場として人気を得ている。無霜地域という自然の地の利を生かして花卉園芸農業が盛んに行われ,冬から春にかけてマーガレット・グラジオラス・キンギョソウなどで,一面の花畑となる。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7111425