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佐川盆地
【さかわぼんち】


県央部,高岡郡佐川町にある盆地。南四国中央低地の西端と四国山地の西南部鳥形・横倉山系との間に挟まれ,仁淀川の中流とその支流によって開析された小盆地。南に虚空蔵山系,東から北にかけては大平山―清宝山系,西は三宝山系に取り囲まれ,斗賀野付近の盆地をも含む。盆地内は仁淀川支流の柳瀬川が,小丘陵の間を縫って谷底平野や河岸段丘を発達させて北流している。各地質時代の含化石中生層や古生層などが複雑に分布し,蔵法院層・川内ケ谷層・鳥ノ巣層などの地質学上の標式地があり,町内の地名がその地層名に付けられ,地質学のメッカとしても有名。盆地には,縄文時代の住居跡の発見された不動ケ岩屋洞穴遺跡などもある。中世,片岡氏をはじめ豪族の割拠するところとなったが,江戸期には,土佐藩家老深尾家がこの盆地の中心佐川に土居を築き在地し,周辺を領地として治めた。明治期の高知―佐川―松山(愛媛県)を結ぶ道路(現在の国道33号)や佐川~須崎間の道路,大正13年の国鉄線の開通により,盆地の中心地佐川は交通の要地としての性格も強まった。良質米を産し,醸造業に適する水が豊富なこともあり,近世以来,県下屈指の酒造地としての伝統がある。豊かな石灰資源を埋蔵し,盆地内各所に石灰岩採掘鉱山がある。比較的風化しやすい岩質で起伏の緩い丘陵地は,ミカン・ナシの果樹園や茶畑などに利用されている。深尾家領時代の文武の奨励もあり,明治以降も田中青山(宮内大臣)や世界的な植物学者牧野富太郎博士,「セルボーンの博物誌」の訳者西谷退三などを生み,独特の文教的土地柄としても知られる。広義には,越知(おち)付近の盆地をも含める場合もある。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7205833