橘湾
【たちばなわん】

千々石(ちぢわ)湾ともいう。南高来(みなみたかき)郡南串山町にある国崎半島と北高来郡飯盛町三味線島を結ぶ線以東の海域。湾は，ほぼ円形に落ち込んだ千々石カルデラで，北岸は千々石断層崖の直線状の断層海岸をなし，東岸は千々石海水浴場から小浜温泉を経て国崎半島に至る弧状の小浜断層で，カルデラの縁の一部といわれる。海底は海岸から急傾斜で約30mに達するが，湾央部でも水深40m内外の平坦地形で砂またはシルトが堆積している。湾内の水温は10～29℃，塩分は31.6～34.5‰の範囲で，水産資源が豊富であり，イワシ・サバ・アジなど巻網による漁獲が多い。湾央部ではエビ・エソ類対象の小型底引網の操業も盛ん。最近はハマチ・ブリの養殖業もある。昭和53年末よりタンカーによる石油備蓄も行われ，20万ｔ級タンカー13隻が錨泊，345万kℓの石油備蓄基地でもあったが，同60年末，備蓄は解除された。この湾名は南高来郡千々石町出身の日露戦争の英雄陸軍中佐橘周太に由来し，大正８年水路部告示による。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7221558