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三根湾
【みねわん】


対馬の中央部,下県(しもあがた)郡豊玉町・上県郡峰町に位置する湾。西の対馬海峡に開口する。三根浦ともいうが,湾内に吉田・狩尾・賀佐・田などの浦があり,それに狭義の三根浦もあることから,全体を総称する場合は三根湾と称する。湾口が上県郡と下県郡の境界で,北岸は峰町,南岸は豊玉町となり,田浦は豊玉町に属している。陸地では田と賀佐の間の岬赤崎から竹無山を通って八割峠に至る線を郡界とする。湾岸には古来の遺跡が多い。三根は大きな村落で,「和名抄」に見える古代三根郷の主邑。弥生前期から後期に及ぶ遺跡が随所にあり,また古墳時代の遺跡も多く,南の支浦吉田,湾外西面の木坂を含めて,この辺に弥生時代~古墳時代の一中心があったことは疑いなく,特に国産・舶載の青銅器の出土情況は,仁位湾沿岸(豊玉町)と並んで多く,原始対馬国の文化中枢が仁位湾から三根湾の付近にあったことが考えられる。「海東諸国紀」は対馬の82浦についてその戸数を列記しているが,その最も多いのが「美女浦〈六百五十余戸〉」,この美女浦が三根浦であることは巻頭の地図によって証明される。吉田はかつて朽木といった。この浦も遺跡が多く,「海東諸国紀」には「仇知只浦〈百五十余戸〉」とある。朽木浦には大蛇の伝説があり,海底に蛇瀬という暗礁があって,干潮時には岩頭を出すが,この岩礁は本来海底の磐座で,大蛇とは海神の変化ではないかと思われる。朽木の対岸狩尾にも口江という地名があり,「クチ」という両者の共有語が,この湾のもとの名に関係しているのではあるまいか。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7607654