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ぽん多本家
【ぽんたほんけ】


心を温めてくれる人と料理

ぽん多本家

「ぽん多」の店名はとんかつ屋を連想させるけれど、根っ子は洋食にある。明治38年(1905)にこの店を創業した初代は旧宮内省の洋食料理人だったし、4代目現当主の島田良彦さんも、山の上ホテルで3年間、洋食の修業をした。当店看板のカツレツだって、初代が「犢のウィンナシュニッツェル」という西洋料理にヒントを得て考案した、由緒を誇る一品なのだ。

戦前までは「料理はおまかせ、客筋は旦那衆」だった鷹揚な店は、今は島田良彦・治子さん夫妻、良彦さんの弟の克彦・雅美さん夫妻、ぽん多ひと筋四十数年の大畑学さんと、いわば家族総出で盛り立てるあったかさに満ちている。

3週間も前から作り始めるデミグラスソースが、やわらかいタンをくるんで薫るタンシチュー。厚さ2㎝ものロースを淡泊な衣がしっかり抱いて、甘く香ばしいカツレツ。料理はどれも舌にやさしく、ソースはご飯と仲がいい。こんな心癒す味に惹かれてか、時折は白洲次郎・正子夫妻も訪れたという。




東京書籍
「東京5つ星の肉料理」
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