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1997年憲法


 タイはクーデターなどをきっかけに、頻繁に憲法の全面改正を繰り返してきた。現行憲法は1932年憲法から数えて16番目。従来と異なり制定過程に学者・知識人層などが多く参加し、「国民(人民)憲法」と呼ばれる。88年のチャチャイ政権誕生以降、本格的政党政治の時代に入ったが、金権政治目立つようになった。それまで軍部と官僚とのコネに依存していた実業家が、農村部での買票によって自ら(あるいはその子供が)下院議員になってビジネス権益拡大を図るようになった。大衆民主主義時代における都市と農村との対立でもあるが、農村に基盤を置く政党政治家への逆襲という形で出てきたのが都市知識人マスメディア主導の1997年憲法制定。3つの改革の柱を持つ。第1は選挙制度の改革。汚職を減らして政治を廉潔にするべく、上院の民選化(金権政治家の出やすい下院へのチェック役)、下院議員の一部の比例制、議員と閣僚との兼職禁止などがその内容。第2は大卒条項。国会議員や閣僚に大卒資格を求める。これはタイの都市部中間層がもつ賢人政治志向と大衆蔑視が露骨な形で表れたもの。第3は監査制度。具体的には選挙管理委員会、国家汚職防止取締委員会や最高裁政治家犯罪部、憲法裁判所の創設である。




朝日新聞社
「知恵蔵2009」
JLogosID : 14846364