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弾道ミサイル防衛
【ダンドウミサイルボウエイ】


 2006年7月5日、北朝鮮がテポドン2号、ノドン、スカッド、計7発をロシアのナホトカ沖に発射したため、日本ではミサイル防衛に関心が高まっている。防衛庁は本来07年3月末までに配備開始の予定だったパトリオットPAC3(射程約20km、移動発射機2両に計8発)を06年中に配備するなど計画の前倒しに努めている。また、米海軍の対空巡洋艦「シャイロー」は、06年6月22日にSM3(射程約600km)による弾道ミサイル迎撃実験に成功し、8月に横須賀を母港とし日本海で配備についた。また、米陸軍も嘉手納空軍基地にPAC3を配備する計画で、弾道ミサイル防衛が試験的ながら、具体化した。日本の計画はSM3搭載のイージス対空システム搭載護衛艦を日本海に展開し、高度120kmから150km以上の大気圏外で2回迎撃、撃ちもらした目標に対し弾着直前にPAC3各2発を発射し、それぞれの命中率が50%とすれば計約94%の破壊公算がある、とされる。航空機と違い、弾道ミサイルは一定の方向から放物線で飛来するので、その迎撃はフライの球をとるのに似て楽な面もある。だが、マッハ8~9の高速で飛来する直径約1mの弾頭に直接衝突して破壊する必要があるほか、弾道ミサイルが宇宙でオトリ弾頭(アルミ箔の風船)を多数放出すると、空気抵抗がないため本物の弾頭と同じ速度、軌跡で飛行し識別が困難、さらに複数の本物の弾頭を放出されると一層迎撃は困難となる。また現在のノドンのような単純なミサイルも、同時に多数を一斉発射されると突破される。実験では標的のミサイルは1発だけで、発射時間も飛行コースも事前に分かっているが、実戦で開発計画どおりの命中率を出す兵器は稀だ。米国はミサイル防衛の実戦配備を急ぎ、なお開発途上のSM3ミサイルを10隻に配備するが、試作品で能力不足のため、各艦数発しか搭載しない。より大型の後継ミサイルを開発中で2015年完成予定。海上自衛隊は10年までにイージス艦4隻を改装し、SM3を搭載、航空自衛隊は07年に関東地方にPAC3発射機8両(32発)、10年までに阪神・中京、九州北部、青森周辺にも配備される。だが弾道ミサイル数発としか交戦できない弾数である上、PAC3は射程が短く守備範囲が極限されるため「気休め」程度でしかない。1999年度から06年度までに3812億円を投入、07年度は2190億円を要求。負担が長期間続くと見られる。




朝日新聞社
「知恵蔵2009」
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