綻ぶ
【ほころ・ぶ】

[自][バ上二]び/び/ぶ/ぶる/ぶれ/びよ
[1]縫い目がほどける。ほつれる。
[例]「なえたる直衣(なほし)・指貫(さしぬき)の、いみじうほころびたれば」〈枕草子・細殿の遣戸を〉
[訳]「着古して柔らかくなった直衣や指貫が、ひどくほつれているので」
[2]つぼみが開く。
[例]「◎青柳(あをやぎ)の糸よりかくる春しもぞ乱れて花のほころびにける」〈古今・春上・二六〉
[訳]「◎青柳が(風になびいて)糸をよって掛ける(ように見える)春こそは、(糸が)乱れて(ほどけるように)花はつぼみが開いたことだ」
[3]口をあける。口をあけて笑う。
[例]「人々みなほころびて笑ひぬれば」〈源氏・少女〉
[訳]「人々が全員口をあけて笑ったので」
[4]鳥などが鳴く。さえずる。
[例]「◎かすみだに月と花とをへだてずはねぐらの鳥もほころびなまし」〈源氏・梅枝〉
[訳]「◎せめて霞(かすみ)だけでも月と(梅の)花との間をさえぎらなければ、(梅の枝にある)ねぐらの鳥も(月の光を朝と勘違いして)さえずっただろうに」
[5](秘密や気持ちなどが)外に現れる。露見する。
[例]「いかならん折にかその御心ばへほころぶべからむと」〈源氏・若菜・上〉
[訳]「どんな機会に、そのお気持ちが外に現れるのだろうかと」
<参考>平安時代以降、四段活用でも用いられたとする説がある。

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5072981 |