生強ひ・憖
【なま-じひ】

<形動>[ナリ]なら/なり・に/なり/なる/なれ/なれ
なま-じひ【生強ひ・憖】(―ジイ)((「なま」は接頭語。「なましひ」ともいう))[1](できそうもないことを)無理にする。強いてする。
[例]「◎物思ふと人に見えじとなまじひに常に思へりありそかねつる」〈万葉・四・六一三〉
[訳]「◎もの思いにふけっていると人に見られまいと強いてふだんのとおりにしていたが、とても生きていられないほどだった」
[2](したくないのに)しぶしぶする。
[例]「女、『よも御為(ため)に悪(あ)しき事はあらじ』と強(あなが)ちに云(い)へば、なまじひに池の辺(ほとり)に具して行きぬ」〈今昔・一六・一五〉
[訳]「女が、『決してあなたにとって悪いことではありますまい』と強く言うので、しぶしぶ(男は)池のそばにいっしょに行った」
[3]しなくてもよいことをする。なまじっか。
[例]「よくせざらんほどは、なまじひに人に知られじ」〈徒然・一五〇〉
[訳]「(習っている技芸が)うまくできないようなうちは、なまじっか人に知られまい」
[4]中途半端だ。
[例]「今生(こんじゃう)も後生(ごしゃう)も、なまじひにし損じたる心地にてありつるに」〈平家・一・祇王〉
[訳]「現世のことも来世のことも、中途半端にやりそこなった気持ちでいたのに」

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5081204 |