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26

匂ふ
【にほ・ふ】


<一>[自][ハ四]<二>[他][ハ下二]<一>は/ひ/ふ/ふ/へ/へ<二>へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ

にほ・ふ【匂ふ】(ニオウ)
《色彩》染まる。美しく染まる。→<一>[自][1]
赤く映える。つややかに美しい。→<一>[自][2]
美しく色づける。染める。→<二>[他]
《匂い》よい香りがする。香気が漂う。→<一>[自][3]
《繁栄》栄える。恩恵が及ぶ。→<一>[自][4]
「に」は「丹」で赤土の意。転じて、赤く輝くものについていう。「ほ」は「秀」で目立つものの意。「ふ」は動詞化する接尾語。赤く色が浮き出るのがもともとの意で視覚的な美しさをいう。『源氏物語』の「光る」から「匂う」に続く情緒は有名。しかし上代の万葉集にも、すでに嗅覚(きゅうかく)的な情緒を表現している。
<一>


[1]染まる。美しく染まる。
[例]「◎草枕旅行(ゆ)く人も行き触ればにほひぬべくも咲ける萩(はぎ)かも」〈万葉・八・一五三二〉
[訳]「◎旅行く人が、もしさわったならば、きっと染まってしまうにちがいないほどに咲き乱れている萩の花であることよ」
<参考>用例中の「草枕」は「旅」にかかる枕詞。
[2]赤く映える。つややかに美しい。
[例]「まみのなつかしげににほひ給へるさま」〈源氏・賢木〉
[訳]「目のあたりが心ひかれる感じでつややかに美しくいらっしゃるようす」
[3]よい香りがする。香気が漂う。
[例]「近き橘(たちばな)のかをりなつかしくにほひて」〈源氏・花散里〉
[訳]「近くの橘の香りが心ひかれるように漂って」
[4](恩恵で)栄える。恩恵が及ぶ。
[例]「わが家まではにほひ来ねど、面目(めいぼく)におぼすに」〈源氏・少女〉
[訳]「(式部卿宮(しきぶきょうのみや)は)自分の家まで恩恵が及んでこないけれど、(娘の紫の上の栄華を)晴れがましくお思いになって」
<二>美しく色づける。染める。
[例]「◎住吉(すみのえ)の岸野(きしの)の榛(はり)ににほふれどにほはぬ我やにほひて居(を)らむ」〈万葉・一六・三八〇一〉
[訳]「◎住吉(→すみよし)の岸野の榛(はん)の木で染めても染まらない私であるが、染まっているのだろうか」




東京書籍
「全訳古語辞典」
JLogosID : 5081721