ざら・む
【ざら・む】

((打消の助動詞「ず」の未然形+推量の助動詞「む」))[1]〔「む」が推量の意の場合〕…ないだろう。
[例]「なにくれと挑むことに勝ちたる、いかでかうれしからざらん」〈枕草子・うれしきもの〉
[訳]「何やかやと競争することに勝ったのは、どうしてうれしくないだろうか(いや、うれしいだろう)」
[2]〔「む」が多く連体形で、仮定・婉曲の意の場合〕…ないような。
[例]「年五十になるまで上手(じゃうず)にいたらざらん芸をば捨つべきなり」〈徒然・一五一〉
[訳]「年が五十になるまで名人の域に達しないような芸は捨てるほうがよいのだ」
[3]〔「む」が意志の意の場合〕…まい。
[例]「さる人あるまじければ、つゆ違(たが)はざらんと向かひゐたらんは、ひとりあるここちやせん」〈徒然・一二〉
[訳]「そんな人(=自分とまったく同じ考えの人)はいるはずがないから、決して(相手の気持ちに)背くまいと対座しているとすれば、(それは)ひとりでいるような気がするのではないか」

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5084117 |