従ふ・随ふ
【したが・ふ】

<一>[自][ハ四]<二>[他][ハ下二]<一>は/ひ/ふ/ふ/へ/へ<二>へ/へ/ふ/ふる/ふれ/へよ
したが・ふ【従ふ・随ふ】(シタガ(ゴ)ウ)
<一>
[1]相手の意のままになる。服従する。負ける。
[例]「奴(やつこ)したがへりとて頼むべからず」〈徒然・二一一〉
[訳]「召使いが服従しているからといって、信頼することはできない」
[2]後からついていく。
[例]「みなつぎつぎにしたがひて行き散りぬ」〈源氏・蓬生〉
[訳]「(女房たちは)みな次々に後からついていって、散り散りに別れ去ってしまった」
[3]伴われる。従属する。身につく。
[例]「さらに身にしたがへる貯(たくは)へもなくて」〈徒然・一八〉
[訳]「少しも身についた財産もなくて」
[4](相手やその場の状況にふさわしく)応じる。対応する。まかせる。
[例]「世にしたがはん人は、まづ機嫌を知るべし」〈徒然・一五五〉
[訳]「世の中に対応していこうとする人は、まず第一に(物事の)時機を知らなくてはならない」
<二>
[1]従わせる。服従させる。意のままに使う。
[例]「たとひたけ十丈の鬼なりとも、などかしたがへざるべき」〈平家・一一・能登殿最期〉
[訳]「仮に身長が十丈(=約三〇(メートル))ある鬼だとしても、どうして服従させられないことがあろうか(いや、そうすることができる)」
[2]つき従わせる。連れていく。率いる。
[例]「人をしたがへ、事おこなふ身となれば」〈源氏・玉鬘〉
[訳]「お供の者をつき従わせて、仕事を執り行う身分になったのは」

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5084928 |