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白妙(しろたへ)の 袖(そで)の別れに 露落ちて 身にしむ色の 秋風ぞ吹く
【しろたへの】


〔〔和歌〕〕〈新古今・恋五・一三三六・藤原定家(ていか)〉
[訳]「真っ白な袖と袖とを分かち、朝別れていく折に、(紅の)涙の露がこぼれ落ち、身にしみて感じられる色合いの秋風が吹いていくことだ」
<参考>「白妙の」は「袖」にかかる枕詞であるが、実際の袖の色でもある。また、白は秋の色。「袖の別れ」は、男女がそれまで重ねていた袖を分かち別れていくこと。「白妙の袖の別れ」は『万葉集』以来の表現。「露」は、別れを悲しむ紅涙のこと。「秋風」に「飽き」が暗示され、恋の終わりを予感させる。本歌「◎吹きくれば身にもしみける秋風を色なきものと思ひけるかな」〈古今和歌六帖(こきんわかろくでふ)・一・秋の風・四二三・作者未詳〉[訳]「◎吹いてくると身にしみた秋風を、(今までは)色のないものだと思っていたことだ」。




東京書籍
「全訳古語辞典」
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