常世(とこよ)出(い)でて 旅の空なる 雁(かりがね)も 列(つら)に遅れぬ ほどぞ慰(なぐさ)む
【とこよいでて】

〔〔和歌〕〕〈源氏・須磨〉
[訳]「常世の国を立ち出て旅路の空を飛んでいる雁も、連なっている仲間から遅れないでいるうちは心が慰められています」
<参考>須磨(→すま)に謫居(たくきょ)する光源氏と従者三人が、鳴きながら空を飛ぶ雁を見て唱和した歌の一つで、これは前右近将監(さきのうこんのじょう)(=空蝉(うつせみ)の義子)の詠んだもの。故郷の常世を出て連なって飛ぶ雁の姿に、都を離れて須磨にわび住まいする自分たちを重ね、仲間との連帯を強調する。「列」は「雁」の縁語。

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5088377 |