つ・べし
【つ・べし】

((完了の助動詞「つ」の終止形+推量の助動詞「べし」))[1]〔「べし」が推量の場合〕きっと…にちがいない。きっと…しそうだ。
[例]「船子(ふなこ)どもは、腹鼓(はらつづみ)を打ちて、海をさへ驚かして、波立てつべし」〈土佐・一月七日〉
[訳]「水夫たちは、満腹してふくらんだ腹を鼓のように打ち鳴らして、海までも驚かせて、きっと波を立てるにちがいない」
[2]〔「べし」が可能の場合〕きっと…できそうだ。
[例]「悩ましきに、牛ながら引き入れつべからむ所を」〈源氏・帚木〉
[訳]「気分もよくないから、牛をつけたままで(車を)きっと引き入れることができそうな所だと(いいなあ)」
[3]〔「べし」が適当の場合〕…のがよい。必ず…べきだ。
[例]「かやうの事こそは、かたはらいたきことのうちに入れつべけれど」〈枕草子・中納言まゐり給ひて〉
[訳]「このようなことは、聞き苦しくていたたまれないことの中に入れるべきだが」
[4]〔「べし」が意志の場合〕…つもりだ。…てしまおう。
[例]「思ひも譲りつべく退(の)く心地し給へど」〈源氏・浮舟〉
[訳]「(浮舟への)思いも(匂宮(におうのみや)に)譲ってしまおうと(薫(かおる)は自分が)身をひく気持ちになられるが」

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5089052 |