いぶせ-さ
【いぶせ-さ】

[名]
((形容詞「いぶせし」の語幹+接尾語「さ」から))[1]気分が晴れ晴れとしないこと。うっとうしい気分。うっとうしさ。
[例]「いぶせさを、限りなくのたまはせつるを」〈源氏・桐壺〉
[訳]「(桐壺(きりつぼ)の帝(みかど)は)うっとうしい気分を、重ね重ね仰せになったが」
[2]不潔であること。汚らしさ。不快さ。
[例]「◎旅の空埴生(はにふ)の小屋(こや)のいぶせさにふるさといかに恋しかるらむ」〈平家・一〇・海道下〉
[訳]「◎旅先で、みすぼらしい家の汚らしさを目にすると、故郷がどれほど恋しく思われることだろう」
[3]気味が悪いこと。恐ろしさ。
[例]「あまりのいぶせさに、目をふさいでぞ落としける」〈平家・九・坂落〉
[訳]「あまりの恐ろしさに、目をつぶって(馬で)駆けおりた」

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5096323 |