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け・し
【け・し】


[形][シク](しく)・しから/しく・しかり/し/しき・しかる/しけれ/しかれ

「けなり」「けに」の「け」と共通の、ふつうとは違っているさまを表す「け」が形容詞化した語。形容動詞「けなり」からできたとする説もある。


[1]ふつうではない。異様だ。変だ。
[例]「吾(あ)はけしき夢(いめ)見つ」〈古事記・中・垂仁〉
[訳]「私はふつうではない夢を見た」
[例]けしう、心おくべきこともおぼえぬを、なにによりてか、かからむと」〈伊勢・二一〉
[訳]変だ、(女が自分に)心を隔てることも思い当たらないのに、どうして、こう(家を出た)なのだろうと思って」
[2]劣っている。よくない。非難すべきである。不確かだ。不実だ。あってはならない。
[例]「◎しかれどもけしき心を我(あ)が思はなくに」〈万葉・一五・三五八八〉
[訳]「◎けれども(恋人に対する)不実な気持ちを私はもってはいないのに」
[例]「辞したてまつらん代はりには、左大臣をなさせ給へ。才(ざえ)、けしうは侍らざめり」〈落窪・四〉
[訳]「(私が)辞任申し上げる代わりには、左大臣を(太政大臣(だいじょうだいじん)に)任命なさってください。(左大臣の)学才は、劣っていないようでございます」
[3]はなはだしい。ひどい。
[例]けしうつつましきことなれど」〈蜻蛉・下〉
[訳]ひどく気がひけることではあるが」
<参考>「け」の場合はすぐれている意にも用いられるが、「けし」にはすぐれているという意味はない。また、「けし」は中古以降打消を伴う用法が多いが、「けし」を打ち消した形の「けしうはあらず」が劣ってはいない・変ではない・悪くはない意になるのに対し、「けしからず」は「けし」の意を強め、不都合だ・はなはだ異常である意になる。[1]~[3]の用例中の「けしう」は連用形「けしく」のウ音便。




東京書籍
「全訳古語辞典」
JLogosID : 5098042