くま-な・し
【くま-な・し】

[形][ク](く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ
▲もともと道や川の曲がり角の意から薄暗い陰を意味する「くま」に「なし」が付いた語。暗い所がない意から、隠すことがない・行き届いているの意となる。
[1]曇りがない。陰がない。
[例]「八月十五夜、くまなき月影、隙(ひま)多かる板屋残りなく漏(も)り来て」〈源氏・夕顔〉
[訳]「陰暦八月十五日満月の夜、曇りがない月の光が、すき間の多い板ぶきの家に余すところなくもれてきて」
[2]隠すことがない。あけっぴろげである。
[例]「さまざまの好色事(すきごと)どもをかたみにくまなく言ひ表し給ふ」〈源氏・葵〉
[訳]「さまざまな恋愛に関することを、(光源氏と頭中将(とうのちゅうじょう)とは)お互いに隠すことがなく打ち明けなさる」
[3]行き届いている。精通している。
[例]「まことの都の土産(つと)にしつべき御贈り物ども、ゆゑづきて思ひ寄らぬくまなし」〈源氏・明石〉
[訳]「きちんとした都へのおみやげにできそうな(明石(あかし)の入道から光源氏への)お贈り物などは、趣があり配慮が行き届いている」

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5100184 |




