ぬ・べし
【ぬ・べし】

((完了の助動詞「ぬ」の終止形+推量の助動詞「べし」))[1]〔「べし」が推量の場合〕きっと…にちがいない。きっと…だろう。
[例]「ここら思ひあつめ給へるつらさも消えぬべし」〈源氏・賢木〉
[訳]「数多くあれこれと思い考えなさったつらさもきっと消えるにちがいない」
[2]〔「べし」が意志の場合〕…てしまうつもりだ。きっと…てしまおう。
[例]「今いと疾くまかでぬべし」〈蜻蛉・中〉
[訳]「今、すぐに(寺を出て)帰ってしまうつもりだ」
[3]〔「べし」が当然の場合〕当然…はずだ。…てしまわなければならない。
[例]「さらずまかりぬべければ、おぼし嘆かんが悲しきことを」〈竹取・かぐや姫の昇天〉
[訳]「どうしても(月の世界へ)帰ってしまわなければならないので、お嘆きになるであろうことが悲しいということを」
[4]〔「べし」が適当の場合〕…てしまえばよい。
[例]「ありつる折にぞ寄りぬべかりけると」〈枕草子・むとくなるもの〉
[訳]「あのとき寄ってしまえばよかったなあと」
[5]〔「べし」が可能の場合〕…できるはずだ。きっと…できるだろう。
[例]「まだ未(ひつじ)に下向しぬべし」〈枕草子・うらやましげなるもの〉
[訳]「まだ未の刻(=現在の午後二時ごろ)にはきっと下山できるだろう」

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5103661 |