やむごと-な・し
【やむごと-な・し】

[形][ク](く)・から/く・かり/し/き・かる/けれ/かれ
▲「止むこと無し」が一語化した語。もともと捨てておくことができない意。捨てておくことができないような大切なものを表し、高貴なものや学識のあるものを表す。「やんごとなし」「やごとなし」ともいう。
[1]捨てておけない。やむをえない。
[例]「『それはしも、やんごとなきことあり』とて出(い)でむとするに」〈蜻蛉・上〉
[訳]「『それこそ、捨てておけない用事がある』と言って(藤原兼家(かねいえ)が)出ていこうとするときに」
[2]高貴だ。家柄・地位が一流だ。
[例]「いとやんごとなき際(きは)にはあらぬがすぐれてときめき給ふありけり」〈源氏・桐壺〉
[訳]「それほど高貴な身分ではない方で、とりわけ帝(みかど)のご寵愛(ちょうあい)を受けていらっしゃる方がいた」
[3]学識がある。
[例]「そこばくのやんごとなき僧をば召さずして」〈宇治拾遺・一五・六〉
[訳]「多くの学識がある僧侶(そうりょ)をお呼びにならないで」
[4]大切だ。貴重だ。格別だ。並々ではない。
[例]「人に恐(お)ぢられたる兵(つはもの)どもなりければ、摂津の守(かみ)も、これらやむごとなき者にして」〈今昔・二八・二〉
[訳]「人に恐れられている武士たちだったので、摂津の守(=源頼光(よりみつ))は、これらの者たちを格別な者として」
[例]「よろづにその道を知れる者は、やんごとなきものなり」〈徒然・五一〉
[訳]「何事についても、その道を専門としている者は、貴重なものだ」
<参考>「あてなり」は一般的な高貴さ、または気品や優美さという属性を表し、「やむごとなし」は最上の身分を表す。

![]() | 東京書籍 「全訳古語辞典」 JLogosID : 5112695 |




