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【ゆ】


<格助>

((上代語))〔体言、活用語の連体形に付く〕[1](動作・作用の時間的・空間的起点)…から。…以来。
[例]「◎天地(あめつち)の分(わか)れし時神(かむ)さびて高く貴(たふと)き駿河(するが)なる富士(ふじ)の高嶺(たかね)を」〈万葉・三・三一七・長歌〉
[訳]「◎天地が分かれたとき以来、神々しく高く尊い駿河(→するが)にある富士山を」


[2](動作の行われる場所や経過点)…を通って。…を通過して。
[例]「◎天離(あまざか)る鄙(ひな)の長道(ながち)恋ひ来(く)れば明石(あかし)の門(と)より大和島(やまとしま)見ゆ」〈万葉・三・二五五〉
[訳]⇒あまざかるひなのながちゆ…〔〔和歌〕〕
[3](動作の手段・方法)…によって。…で。
[例]「◎赤駒(あかごま)を山野(やまの)にはがし捕りかにて多摩(たま)の横山徒歩(かし)か遣(や)らむ」〈万葉・二〇・四四一七〉
[訳]「◎赤毛の馬を山や野に放し、捕りかねて、多摩の横山を徒歩行かせるのだろうか」
[4](比較の基準)…よりも。…より。
[例]「◎人言(ひとごと)はしましそ我妹(わぎも)綱手(つなて)引く海まさりて深くしそ思ふ」〈万葉・一一・二四三八〉
[訳]「◎人のうわさはしばらくの間だ、あなたよ。引き舟の綱を引く海よりも強く深く思っているよ」
<参考>類義語に「ゆり」「よ」「より」があるが、中古以降は「より」だけが用いられた。




東京書籍
「全訳古語辞典」
JLogosID : 5113094