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運命はなぜ赤い糸で結ばれている?


「私とあなたは、運命の赤い糸で結ばれているのよ」
最近は、こんな台詞(せりふ)を耳にすることも少なくなりました。結ばれる運命にある男と女は、生まれたときからお互いの小指と小指が目に見えない「赤い糸」で結ばれているという言い伝えですが、実はこの話が生まれたのはかなり古く、たとえば『古事記』には、次のような話が出ています。
「その昔、大切な娘が妊娠したのに驚いた両親が、その娘を問いつめたところ、見たことのない男が毎晩夜這(よば)いしてきたことを認めました。
男の素性を確かめようと、両親は娘の寝床のまわりに赤土をまいたうえ、男の着物の裾(すそ)に針で赤い糸を通すよう言い含めました。翌朝、その赤い糸をたどっていくと三輪山(みやま)の神の社まで続いていました。その男の正体は、大物主神(おおものぬしのかみ)だったのです」
そして、同様の話は中国の民話にも残されています。
「ある日、若い男が、大きな袋にもたれて本を読んでいる老人に出会いました。その老人は『この袋の中に入っている赤い縄で男と女の足を結ぶと、必ず結ばれるのじゃ。お前の足にも赤い縄が結ばれているぞ』といいました。老人が口にした相手は、あまりにも身分が違う女性でした。ところがそれから一四年後、彼はその老人が話したとおりの女性と結ばれたのでした」
ちなみに、赤は血を、小指は契りをあらわしていると考えられています。




角川学芸出版
「花マル雑学塾」
JLogosID : 5145006