盛り塩と清めの塩の違いは?

本来の意味を知らないと、しきたりが逆の意味になってしまうことがよくあります。盛り塩と清めの塩もその一つです。
連敗中の野球チームがベンチに三角錐状に塩を盛っているのをよく見ますが、これは「清め」ではなく「招く」ことの意味で、今までの悪い運を追い払うどころか、連敗を招くという意味になってしまいます。
古来より、日本には海洋信仰があり、塩水は禊(みそぎ)、つまり悪魔と不浄なものを取り去る清めの働きを持っていました。例えば、伊勢参りで、昔は垢離(こり)を取ると呼ぶ行為があり、宮川の河口の海に入って体を清め、それから参拝していました。それが略されて、海草を体のまわりで振り回し、禊をするかたちになりました。
このように、海水の化身としての塩の結晶は、汚れを払う神聖なものとされ、神への捧げ物として扱われたのです。よって、神事がルーツの相撲では、塩をまいて身を清めてから土俵に上がります。そして、葬儀から帰ったときは、死霊を持ってこないようにと、玄関で塩により禊ぎ払うのです。同じように嫌な客が帰ったあとにも、玄関に塩をまきます。
いっぽう、客商売の門口に三角錐状に盛る「盛り塩」は、千客万来を祈る縁起かつぎです。清めの「祓(はら)う」とは逆に、「招く」のです。テレビで、祈祷師(きとうし)が除霊する番組を見るとわかるはずです。決して盛り塩はしていません。お皿の塩は広げる程度で、盛ってはいません。

![]() | 角川学芸出版 「話を盛りあげる究極の雑学」 JLogosID : 5180424 |