ヲホツナイ
【おほつない】

(近世)江戸期から見える地名。東蝦夷地トカチ場所のうち。尾発内・尾払内とも書いた。十勝地方南東部，大津川河口部右岸。地名は，アイヌ語のオオホツナイ（深い川・川尻がそこにある川の意）に由来する（豊頃町史）。「天保郷帳」には「トカチ持場之内，ヲホツナイ」とある。寛政元年クナシリ・メナシアイヌが蜂起した際松前藩から派遣された新井田孫三郎は当地に宿泊し，「兼て申付置候立火（のろし）場所未出来不致候に付，此所は番人共斗居候故ひろふ（ビロウ）にて支配人之得と可申付趣にて其儘に致置」と記している（寛政蝦夷乱取調日記／庶民集成）。このことから，番屋が置かれ番人がいたことがわかる。寛政12年皆川周太夫が十勝内陸部を踏査し，その報告書で，十勝と日高を結ぶ60里余の幹線道路を開削し，大津川を締め切り十勝川河口に港をつくることを提唱している。この計画は幕府により実行されようとしたが，結局は着手されなかった（豊頃町史）。文化年間の「東蝦夷地各場所様子大概書」によれば，トカチ場所内尾払内に番屋兼通行屋・通行所・仕入物蔵・物置蔵・馬屋・アイヌ小屋があり，馬船１・持府船１・馬７が備え付けられている。また，野菜畑もあった（新北海道史７）。松浦武四郎「初航蝦夷日誌」に「ヲホツナイ……会所……南向。勤番上り下り泊り。勤番クスリ支配所なり。夷人小屋廿軒斗有り。蔵々有。弁天社，非常御備蔵，并ニ船澗有」とある。安政２年稲荷社建立。同年のアイヌ住人は６軒・22人（殖民状況報文十勝国）。同「廻浦日記」では「ヲホツナイ……川向に鮭番屋有る也。此処土人四軒有。其外両所より四軒ヘルフネえ引越居るよし也。また三軒当所よりヲサウスへ引越候由。右合九軒人別三十九人」とある。また，同「戊午日誌」では「夷家五六軒有れども，是は山より出稼の者のよし。当所帳面と云は弐軒」と見える。文久３年トカチ場所請負人杉浦嘉七雇人堺千代吉が和人最初の移住者として当地に来着，慶応３年には大津漁場取締役となる。明治２年十勝国十勝郡に属す。明治初年大津村となる。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7001662