鎌哥
【かまうた】
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(近世)江戸期から見える地名。カマガウタ・釜ウタなどとも書く。東蝦夷地箱館六ケ場所の1つ戸井場所のうち。渡島(おしま)地方南部,亀田半島の南沿岸部。地名はアイヌ語のカマオタに由来し,磐沙を意味するという(北海道蝦夷語地名解)。寛政12年和人地となる。天明2年の「松前志」に「カマガウタ」と見えるのが史料上の初見。「天保郷帳」には「従松前東在」として「戸井,右持場鎌哥」と記載される。産物として鰤・鰯・昆布・布苔・鮫があった(東西蝦夷地道中略記・松前随商録)。「嘉永七年六ケ場所書上」によれば,船27・鰯引網2・鯡差網6・鰤差網25を有し,元揃昆布2,500貫・鰯粕3,000貫・布海苔250貫を産出している。松浦武四郎「初航蝦夷日誌」には,「ウタハマ,人家壱弐軒,小砂浜也。中ウタ,同じく人家少しヅゝ有。小流有。山近くし而樹木なし。越而カマウタ,転太石浜にし而人家十弐,三軒有。小商人壱軒,皆こんぶとり。漁者のミ也」と見える。「嘉永七年六ケ場所書上」によれば,家数16・人数75,うち男42・女33,馬12頭を飼育。その頃の小頭は辰五郎,産神社として稲荷社(棟札には明和4年の創建と伝える)があった。明治2年渡島国茅部郡戸井村の一部となる。
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![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7001987 |