トマム
【とまむ】

(近代)大正８年～現在の占冠(しむかつぷ)村の地区名。もとは占冠村の一部。鵡川(むかわ)上流域に広がるトマム原野の一角。地内は字トマム・上トマム・中トマム・下トマムからなる。地名の由来は，アイヌ語のトマム（沼のあるヤチ川の意）で，学校名や神社名などは苫鵡と漢字を当て，富満（殖民公報），斗満（占冠村史）とも書いた。明治40年頃から砂金の採取が始まり，同42年「殖民公報」にホロカトマム川出土の砂金塊が写真入りで報じられたのを契機に砂金ブームが起こり，多くの砂金掘りが入った。明治35年植民区画が測設されたが，高原地帯であるために，同41年頃から開拓が始まったものの定住者はなかった。大正期に入ると，京都農場（下トマム・中トマム）・山上農場（中トマム）・工藤農場（ホロカトマム）などの個人農場もあったが，大正６年上トマムに佐賀団体・岩手団体，同７年下トマムに秋田団体・青森団体などが集団入植。大正２年の戸数24であったが，この団体入植で157となる。主要な農作物は，ジャガイモ・ソバ・イナキビなどで，昭和６，７年頃は除虫菊が栽培された。昭和初期の連続的な凶作で，同９年の戸数80となる。大正中期からは造材が盛んに行われる。当時は交通が不便で，字中央にある役場に行くのに夏は２日，冬は３日以上も要した。昭和９年占冠～トマム間の道路が開削されたが，冬も車が通行できるようになったのは同34年であった。昭和22年トマム支所が開設。同46年ポロカトマム～落合間，同48年占冠～落合間に村営バスが運行。戦後，緊急開拓が入り，昭和24年苫鵡開拓農協が組織された。人口は，同25年828，同35年1,373。同40年代に入って造材が衰退，同50年の人口40となる。昭和45年下苫鵡小学校ホロカ分校，同50年下苫鵡小中学校が廃校。昭和35年頃から肉牛の育成牛を主とする酪農も行われるようになる。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7005651