三石郡
【みついしぐん】

(近代)明治２年～現在の郡名。明治２年国郡制設定により日高国の１郡として成立。江戸期のミツイシ場所の地域にあたる。郡名は場所名による。会所がミツイシ（姨布村）にあった。明治２年開拓使の管轄，同15年札幌県，同19年からは北海道庁に所属。明治９年第22大区７小区となり，郡内には姨布(おばふ)村・辺訪村・神潭(かむいたん)村・延出村・幌毛村・鳧舞(けりまい)村・本桐村・歌笛村があった（北海道志）。同10年のアイヌの戸数64・人口327（同前）。同24年の戸数190・人口871うち男446・女425（徴発物件一覧）。明治12年浦河・三石・様似(さまに)・幌泉・広尾・当縁(とうぶい)・十勝・中川・河西(かさい)・河東(かとう)・上川郡役所，同20年からは浦河・三石・様似・幌泉・沙流(さる)・新冠(にいかつぷ)・静内郡役所の所轄。同30年浦河支庁，昭和７年日高支庁，同22年からは北海道日高支庁管内のうち。明治39年までに成立した姨布村・辺訪村・幌毛村・鳧舞村・本桐村・歌笛村の６か村が合併して二級町村三石村が誕生，１郡１村となった。当郡は幕末以来三石コンブで代表される漁業基地として発展。早くから三石～函館間を結ぶ海運が確立していて，明治９年小林重吉（旧場所請負人）によって姨布村の旧会所内に日本初の海員学校が開設された。同校は２年後に函館に移され，のち函館商船学校となった。明治14年から郡内各地に入地がはじまり，同17年小林重吉によって水田試作が行われた。同18年阿波から高岡精一郎が入植して専業農家の草分けとなり，同20年新潟県から遠藤幸次郎・榎本鹿太郎が海岸部に入地して佐渡船による沖合漁業を開始。同20年代にかけて大塚助吉により競走馬の生産が行われ，大塚は日高馬産の父といわれるようになった。明治19年の戸数195・人口753，田３反歩・畑58町歩，米６石・大麦２石・蕎麦68石・燕麦127石・バレイショ481石などの生産があり，馬511頭を有して牧畜も発達。漁業ではコンブの3,000石を中心に，サケ・マス・イワシなどの漁獲があった。豆類が大きな伸びを示し，三石大豆と呼ばれた。また，若井別牧場・シュムロ牧場・ルベシベ牧場があって牧畜も大きく発展。漁業はコンブが採取許可制となって1,570石と減少したが，沖合漁業が発達した。明治33年静内～浦河間の道路が全面開通し，陸上交通によって各部が結ばれた。同34年カツオ釣漁業がはじまり，郡内でカツオ節製造を開始。明治41年の産業別生産高比は農産が73.1％を占め，農業を中心とする郡になっていた。明治43年庄内灌漑溝組合が設立されたのをはじめ，各地で灌漑組合ができ本格的な造田作業が進み，水稲耕作が増加。大正４年佐瑠太（富川）～浦河間に定期客馬車，同９年には定期乗合自動車の運行がはじまった。同15年の世帯数1,111・人口5,810。国鉄日高線が昭和８年には三石まで，同10年には浦河まで延長されて三石駅・本桐駅がそれぞれ開業。同13年三石漁港が完成。三石村は昭和26年町制施行して現在にいたる。同35年の世帯数2,079・人口１万1,479，産業別人口は農業2,405・林業148・漁業413・鉱業１・建設業348・製造業270・卸売小売業209・金融保険不動産業50・運輸通信業128・サービス業287・公務124・その他12。昭和35年以降人口の減少が続き，農業人口は50％前後となり，減反政策によって水稲生産が同50年6,720tから同57年3,426tに減少，さらに大規模農業，畜産への転換によって年々減少の傾向にあり，漁業・林業も減少。農業では水田転作によるキュウリ栽培を行い，43tを生産して三石キュウリとして札幌市場に出荷，黒毛和牛，乳牛飼育などに力を入れ，漁業では大規模築磯事業・魚礁投入事業・サケ放流事業などを行って沿岸漁業資源の整備，三石・鳧舞漁港の修築工事を進めている。同50年の世帯数2,013・人口7,424。郡内の特産品は三石コンブ・三石キュウリ・三石和牛・野球バットなど。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7008459