紋別郡
【もんべつぐん】

(近代)明治２年～現在の郡名。明治２年国郡制設定により北見国の１郡として成立。江戸期のモンベツ場所の一部地域にあたる。郡名は場所名による。明治２年開拓使の管轄，同15年根室県，同19年からは北海道庁に所属。なお，明治２～３年は和歌山藩の分領支配。同９年第27大区４小区となり，紋別村・藻鼈(もべつ)村・瑠橡(るろち)村・渚滑(しよこつ)村・幌内村・興部(おこつぺ)村・沢木村・湧別村・沙留(さるる)村・雄武(おうむ)村があった（北海道志）。同10年のアイヌの戸数89・人口361（同前）。同24年の戸数152・人口654うち男402・女252（徴発物件一覧）。明治12年網走・斜里・常呂(ところ)・紋別郡役所，同14年からは網走・斜里・常呂・紋別郡役所の所轄。同30年網走支庁，昭和22年からは北海道網走支庁管内のうち。明治５年常呂郡との郡界が確定した。明治16年頃から，幕末以来漁場を持っていた藤野家以外に漁場を開く者がいた。明治26年以後湧別原野・渚滑原野に農民が入植。同年の戸数2,613。同じ頃にニシン・サケ・ナマコ・オヒョウ・マスなどの水揚げがあり，加工品として，鰊粕２万9,600石・鰊油667石・塩鮭1,425石・鮭筋子85石・大鮃粕3,260石・煎海鼠48石・コンブ250石，計24万円余の収益をあげた。ほかにマッチ軸木も生産した。同30・31年屯田兵400戸が入植，麦・バレイショを栽培。大正期にはハッカの作付けを拡大し，第１次大戦の農作物価格の高騰により農家経営の基礎を確立。第２次大戦後，平野部でリンゴ・ビート・アスパラガスを栽培。近年ではチューリップ球根の生産も行われている。北部の傾斜重粘土地帯では畑作・高地酪農が進められ，乳牛が多頭飼育されている。後背地の森林地帯は，大正10年国鉄名寄線の開通後，木材の生産・輸送が行われるようになった。戦後は製材のほか，チップ・割箸・妻楊子や木工芸品など林産加工が進み，近年カラマツの生育とともに集成材加工の開発が進んでいる。オホーツク海に面する地域では，サケの中でも優秀な品質のメジカの漁獲のほか，ズワイガニ・ケガニなどの特産を誇ってきたが，近年浅海資源の適切な利用・漁業設備の合理化が行われ，佐呂間湖のホタテ貝，海苔などの養殖栽培漁業が発達。特に湧別町では昭和58年ホタテ貝1,000t・22億円の生産をあげた。明治39年～大正４年の間に紋別村・渚滑村・興部村・雄武村・下湧別村・上湧別村が成立。大正８年紋別村が町制施行。同年遠軽(えんがる)村が成立，昭和９年町制施行。同12年には紋別町・下渚滑村・上渚滑村・滝上村・興部村・西興部村・雄武村・下湧別村・上湧別村・遠軽町・生田原(いくたはら)村があった。同15年下渚滑村は渚滑村と改称。同21年丸瀬布(まるせつぷ)村・白滝村が成立。同22年滝上村，同23年雄武村，同26年興部村が町制施行。同28年下湧別村が湧別村と改称し，同時に町制施行。同年上湧別村，同29年生田原村が町制施行。同年紋別町・渚滑村・上渚滑村が合併し紋別市が成立。農林業の衰退もあり過疎化が進行。世帯数・人口は，同40年２万4,969・10万2,475，同55年２万3,661・７万5,625。現在，当郡には生田原町・遠軽町・雄武町・興部町・上湧別町・白滝村・滝上町・西興部村・丸瀬布町・湧別町がある。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7009100