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全良寺
【ぜんりょうじ】


秋田市八橋(やばせ)所在。山号は大智山。臨済宗妙心寺派。本尊釈迦如来。承応3年に,佐竹氏の家老渋江隆光が江戸東禅寺の新洲祖嶺を開山に迎えて開基となった。初めは河北山大隆寺といったが,延宝元年に蒲室祖昌が大坂冬ノ陣で戦死した「渋江田法」の編組者秋田藩家老渋江内膳政光と6騎の家臣を弔い,大智山全良寺と改めた。「享保郡邑記」では「善竜寺」,「秋田風土記」で「全竜寺」と書かれる。滝と藤の花が有名な景勝地でもあったが,最も特徴をなしているのは「官軍墓地」である。戊辰戦争の官軍戦死者17藩665名の死体・爪髪を埋葬したが,のち改葬されて現在は約264名の墓がある(羽陰温故誌)。最年長69歳,最年少は15歳であった。この墓地を造るため全良寺11世大内海山和尚は寺の田地を売却し,友人の石工馬口労町辻源之助の家屋敷を売った協力を受け,30年かかった。現在は秋田市の文化財に指定されている。このほかに火消し勇組の歴代組頭の墓や,渋江家臣で勤王活動ののち,大村益次郎暗殺事件にかかわって明治2年刑死した阿仁(あに)出身の金輪五郎(志渡長次)の墓,戊辰開戦直前仙台藩使節を襲い,評定奉行志賀参事を殺して割腹した小室以下6名の青年武士の墓などもあり,近代の人では滝田樗陰・伊藤永之介の墓もある。下寺の月桂寺には鎌倉期の青銅仏という国指定の重要文化財阿弥陀如来坐像があり,参道の松並木の間には,石の大仏や地蔵尊が並んでいるが,もと近くの草生津(くそうづ)刑場にあったものという(秋田のお寺さん・秋田の今と昔)。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7021609