縫殿村
【ぬいむら】

旧国名:出羽

(近世)江戸期～明治10年の村名。出羽国平鹿(ひらか)郡のうち。秋田藩領。成瀬川と皆瀬川の合流点付近の氾濫原開発によって成立した村。開発者小原縫殿助吉実にちなみ，村名を命名。村名はまた「ぬいどの」「ぬいびらき」ともいい，縫殿開とも書く。小原吉実は和賀氏旧臣で慶長７年佐竹入部反対一揆鎮圧に功あり，佐竹氏に抱えられ，慶長20年８月２日・元和３年９月９日藩家老梅津憲忠から増田周辺の開発指紙を与えられ，晩年には当村を中心に辛労免50石を許可（茂木家文書など）。「秋田領変地目録」では縫殿開(ぬいびらき)村と報告。「元禄７郡絵図」では成瀬川の右岸部に縫殿開新田村144石余，左岸部にも縫殿開新田村113石余と２か村を図示。後者はまもなく五輪羽場(ごりんはば)村と村名を変え，雄勝郡内の地ながら平鹿郡縫殿村の枝郷となる。「宝永２年黒印高帳」でも縫殿開新田村当高283石余とある。享保年間以後，公式名は縫殿村となる。「享保黒印高帳」で村高408石余・当高294石余（うち本田並197・新田97），「寛政村附帳」で当高290石余，「天保郷帳」は294石余。戸数は「享保郡邑記」で56戸，「秋田風土記」で52戸。嘉永元年には当高252石余，戸数50・人口175・馬９（旧醍醐村役場文書）。親郷増田村の寄郷である。村鎮守は観音堂。寺院は小原吉実が慶長16年に増田村関口(せきのくち)より移建し，菩提寺としたという一向宗東流山通覚寺（東本願寺直末寺）。明治10年本郷は増田村に合併，枝郷五輪羽場村は三又(みつまた)村に編入。ともに村名は小字として伝わる。五輪羽場地区は，昭和32年稲庭川連町大字三又より分離し増田町に編入。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7022413