榛名山
【はるなさん】
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県の中央部,吾妻(あがつま)郡・群馬郡・北群馬郡にまたがる三重式火山。上毛三山の1つ。榛名県立公園に属する。最高峰は外輪山掃部ケ岳で,1,448m。北は吾妻川,南は烏川,西は温川とその支流見城川に限られ,東は利根川を隔てて赤城山と相対する。中央火口丘榛名富士(1,391m)と火口原湖榛名湖をかかえるカルデラは,東部を欠いた馬蹄形をなし,その規模は東西約4km・南北2.5km。外輪山は北東から臥牛山・烏帽子ケ岳・髪櫛山・掃部ケ岳・天目山などから形成されている。さらに西から南にかけた外側には,最初の成層火山の山体が著しく浸食されて形成された杏が岳・鏡台山・天狗山・音羽山・鷹ノ巣山・吾妻山などがあり,複雑な地形を呈している。外輪山の東腹には相馬岳・二ツ岳・浅間山(水沢山)の寄生火山がある。二ツ岳の噴火は最も新しく,6世紀末に大量の軽石を噴出し,北東方向に帯状に堆積,コンニャク栽培が行われている。また,この軽石は,昭和23年から軽量ブロックの骨材として利用され,渋川地方の地場産業となっている。二ツ岳の麓には伊香保温泉の湯元がある。火口原沼の原には明治15年士族授産事業として乳牛と種馬の榛名牧場が開設され,第2次大戦後には開拓者が入植してキャベツやジャガイモの栽培が行われている。榛名湖の南西岸には土産物店や飲食店などが立地し,観光集落が形成されている。湖畔には榛名高原学校・ビジターセンター・ユースホステルなどがあり,保養地となっている。また戦後,温泉が湧出して榛名町が管理している。観光集落から外輪山を登ると天神峠があり,塩原太助の寄進した常夜灯がある。天神峠から古道を南に下ると,榛名神社と門前町の社家町がある。江戸中期頃より関東一円の農民を中心とする信仰団体の榛名詣でが盛んとなり,天保年間には社家町の宿坊は83を数えた。御札は虫除け・嵐除け・雷除けで,雨乞いの神として篤く信仰され,近年まで雨乞い行事が行われた。東方の水沢山の麓には水沢観音として親しまれている水沢寺があり,門前町の水沢ウドンは名物となっている。南麓の榛名町白岩には白岩観音で知られる長谷寺がある。北東斜面標高750mには伊香保温泉があり,伊香保神社下に続く300段余の石段の両側に,旅館や土産物店が階段状に連なり,独特の湯街を形成している。東麓の渋川市ではリンゴ園,吉岡町・榛東(しんとう)村ではブドウ園などの観光農園がある。南麓の箕郷(みさと)町ではウメ,榛名町ではナシ・モモ・ウメなどの果樹栽培が盛んである。南西麓の倉淵村では陳田茗荷で代表される野菜栽培やシイタケ栽培が行われている。西斜面は戦後大規模な開拓が実施され,耕作限界が200m上がり900mまで耕地化され,野菜を中心とした農業が行われている。榛名山麓全域では,江戸期より養蚕が盛んであったが,近年掃立量が減少し,養豚・養鶏・酪農・野菜・果樹・米麦など農業経営も多岐にわたっている。
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![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7046710 |