芦ノ湖
【あしのこ】
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足柄下郡箱根町の箱根火山カルデラ内にある火口原湖。面積7.7km(^2)・周長19.9km・最大深度42m・湖面標高725m・総貯水量1億7,750万m(^3)。約3,100年前の箱根火山の最終活動期(中央火口丘群形成期)に,現在の大湧谷付近で山体崩壊を伴う大爆発(通称神山崩れ)が起こり,その山崩れの堆積物が西方へ流下し,仙石原を横断して早川の上流部をせき止めたため南側に当湖が誕生した。東側は浸食され,排水して仙石原湿原となった。寛文16年,深良村(現静岡県裾野市)の大庭源之丞と江戸の町人友野与右衛門によって,湖尻峠の直下に外輪山を貫通する箱根用水(全長1,342m)が建設されて以来,当湖の水利権は静岡県側の裾野市・御殿場市・長泉町・清水町が組織する芦ノ湖水利組合にあり,神奈川県側の水利には規制が加えられるようになった。その後明治29年に,早川流域の農民が水不足から早川源流の逆川水門を破壊した事件を裁いた大審院判決で本県側が敗訴し,その水利慣行は現在まで続き,箱根町の水不足と相まって慣行の見直しが考えられているが,未解決である。当湖は,富士箱根伊豆国立公園に属する箱根観光の中心としてにぎわい,現在,箱根・元箱根から桃源台・湖尻まで2社が定期観光船を運航している。大正14年芦ノ湖に放流されたブラックバスは有名で,ニジマス・ヤマベ・ヘラブナなどの釣場としても観光客を集めている。しかし明治35年には透明度16もあった湖水も,昭和54年には6まで落ち,湖水の汚染が進み環境保全が問題となっている。湖南岸の箱根から元箱根にかけては箱根関所跡,旧街道杉並木,旧箱根離宮の恩賜箱根公園,南北朝期から江戸期までの石造物の多い賽(さい)の河原,箱根神社などがある。東岸には箱根国際村,箱根園,箱根ピクニックガーデン,箱根樹木園があり,箱根園と駒ケ岳山頂はロープウエーで結ばれ,北部の湖尻・桃源台にキャンプ場なども整備され,早雲山と結ぶロープウエーとも相まって東岸は箱根山中でも最も観光的色彩が強い。湖をとりまく散策路も開かれている。
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![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7065565 |