八松
【やつまと】

旧国名:相模

(中世)鎌倉期に見える地名。相模国高座(たかくら)郡のうち。「やつまとが原」「八松ケ原」とも称した。「平家物語」巻10によると，文治元年平宗盛が鎌倉に送られてくるが，その道筋の記事として「小磯，大磯の浦々，やつまと，砥上ケ原」と見える（古典大系）。なお，当地は「和名抄」の和太(やまと)郷の転訛ともいわれる。また，「源平盛衰記」には，寿永元年佐々木高綱が木曽義仲追討のため上洛する道筋に「片瀬川，砥上原，八松原馳過て，相模川を打渡」とあり，また「海道記」には「相模川を渡りぬれば，懐島に入，砥上原を出て，……北の原を望めば……中に八松と云所あり」として「やつまつのやちよのかげに思ひなれてとなみが原に色もかはらじ」と歌っており（群書18），これらを整理すると，片瀬川と相模川との間に引地川を境として東から「砥上が原」「八松ケ原」という２つの草原があったことが知られる（藤沢市史４）。現在の藤沢市辻堂付近の海岸に比定される。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7069463