北加賀
【きたかが】

県の中央部南寄りの地区。旧の河北(かほく)・石川両郡，加賀地方の北部から東部を占め，金沢市・松任(まつとう)市・石川郡の美川(みかわ)町・野々市(ののいち)町・鶴来(つるぎ)町・河内(かわち)村・吉野谷(よしのだに)村・尾口(おくち)村・鳥越(とりごえ)村・白峰(しらみね)村と河北郡の津幡(つばた)町・宇ノ気(うのけ)町・内灘(うちなだ)町・七塚(ななつか)町・高松町の２市８町５村を含む。面積は1,411km(^2)（県全体の33.6％），人口は60万人（県全体の53.9％）を占め，石川中央広域圏を形成し，文字どおり県の中心的な役割を果たしている。地区の中心となり，人口の大半が集中するのは，手取(てどり)川以北の金沢平野で，手取川扇状地を中心として，犀川(さいがわ)や浅野川などの作った沖積平野である。海岸には砂丘が発達し，特に北部では標高が50mを超える内灘砂丘があり，潟湖として河北潟が形成されている。北東部には宝達(ほうだつ)丘陵，津幡森本丘陵が，東部から東南部にかけては両白山地が広がり，その稜線は富山・岐阜・福井各県との県境を作る。両白山地には県の最高峰である白山(はくさん)（標高2,702m）をはじめ，医王山(いおうぜん)（標高939m）・大門(だいもん)山（標高1,572m）・笈ケ岳(おいずるがだけ)（1,841m）などの山並みが県境にそびえる。また手取川上流や犀川・浅野川では河岸段丘も発達する。人口40万人を超える金沢市とその中心地域で，当県のみならず，北陸３県の中心として各産業も非常に発達し，高次の都市的な機能もすべて集中し，県内で最も人口増加が激しく，都市化の進んだ地域となっている。しかし，両白山地山麓は平地もほとんどなく，冬季の積雪も多く，白山麓５か村（河内村・吉野谷村・尾口村・鳥越村・白峰村）は面積では県下全体の15.5％を占めるが，人口は9,000人で県全体の2.2％にすぎず，人口も減少し，奥能登と並ぶ過疎地域となっている。金沢平野を中心とした農業は，米作を中心とした兼業農家が多い。古くから耕地整理も行われた米作の先進地域で，早場米地帯として知られている。大消費地金沢に近いことから園芸農業も盛んで，県下では専業農家の多い地域となっている。米以外の代表的な作物としては，高松町のブドウ，砂丘地帯のスイカ・ダイコン，金沢市北郊のレンコン，西郊のナシ，松任市のナシ・プリンスメロンなどがあげられる。また，北部の河北潟はその３分の２が干拓され，水田となる予定であったが，米の減反政策で，牧草地・畑として整備される計画に変更された。工業も盛んで，金沢市を中心として機械・繊維工業がよく行われ，工業製品出荷額では県全体の45％を占める。特に，新しく大野川河口に作られた金沢港に近い金沢市西部から国道８号近くにかけて大工場が多い。また伝統的な産業も多く，城下町金沢では加賀友禅・金沢箔・金沢仏壇・加賀蒔絵・桐工芸・大樋焼・九谷焼など数多い。そのほか，金沢市大野町の醤油製造，金沢市・鶴来町の酒造，白峰村の牛首紬，金沢市二俣(ふたまた)町の二俣和紙などが知られる。商業活動も活発で，特に金沢市は卸・小売ともに北陸３県では最高の販売額を持ち，片町・香林坊(こうりんぼう)・武蔵ケ辻は特に大きな商店街を作る。最近はモータリゼーションの影響で金沢南西郊の野々市町など郊外での大型スーパーの進出が目立つ。文化的な施設もこの地区に集中し，文化・体育施設で県内で最高の水準のものが集中し，金沢大学・金沢美術工芸大学をはじめとする県内の大学・短大もすべてが集中する。また城下町金沢を中心に観光客も多く，日本三名園の１つ兼六園，金沢城の石川門，成巽閣(せいそんかく)，湯涌(ゆわく)温泉・江戸村，卯辰(うたつ)山公園などに多くの観光客が訪れる。東南部の両白山地には白山国立公園があり，夏の白山登山，中宮(ちゆうぐう)温泉・噴泉塔群が近くにある岩間(いわま)温泉への観光客が多い。またこの白山は動植物の宝庫であり，県花のクロユリなどの高山植物，ブナの原生林，カモシカ・ニホンザルなどの野生動物が多い。さらに獅子吼手取県立自然公園に含まれる獅子吼高原スキー場，白山比咩(しらやまひめ)神社，鳥越大日スキー場，白山一里野県立自然公園に含まれる一里野高原スキー場，それに白峰高原スキー場，手取ダムによって生まれた手取湖，白山信仰の史跡なども分布する。この北加賀への交通路としては，国鉄北陸本線が東部の倶利伽羅(くりから)トンネルで富山県から入り，国道８号・北陸自動車道と並進するように金沢平野を南西に抜ける。また津幡(つばた)から北へは能登地方に続く，国道159号・国鉄七尾線が延び，河北郡北部をつなぐ。白山麓へは国道157号が金沢より延びる。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7086745