経ケ岳
【きょうがだけ】

釈子岳(しやくしだけ),釈氏岳ともいう。大野盆地の北東にそびえ,大野市と勝山市の境にある山。標高1,626m。山名は,山頂に経巻を埋納したことによると考えられる。釈子岳は山頂を杓子とみたものか。火口跡を残している県内では数少ない火山で,「平泉寺史要」は「平泉寺兵燹の際,経巻を焼きたる灰を瓶に納めて絶頂に埋めたるを以て,経ケ岳と称すと,今も猶その瓶あり,数十の河原石を以て其の瓶を覆ふ,登山者此の石を除きて瓶を見る時は忽ち雷雨ありといふ」と記す。現在山頂に経筒の存在が確認されているが,埋納の時期はこの伝承より古く古代末期にまでさかのぼると推定される。山頂の南西に大きく開いた椀状の火口がみられ,爆裂火口と推定される。三角点が火口壁の最高点にある。火口底は標高1,330mほどの低湿な平坦地で,「池の大沢」とか「池の平」とよばれ,唐沢が南西へ開け,急流の唐谷川となって九頭竜川に合流する。山体は第三紀から第四紀に噴出した新期の安山岩類からなり,唐沢はかつて大崩壊して火山泥流を押し流した跡であり,泥流の末端は九頭竜川を横断して真名川まで達し,塚原野をつくった。南西の山麓,標高450mから640mにかけての緩斜面は池ケ原,六呂師ケ原とよばれた不毛の原野で,採草地として利用される入会地であったが,第2次大戦前には鯖江36連隊の演習場に利用されたこともあった。現在は奥越高原牧場や六呂師高原スキー場,奥越青少年の森,円山公園などの施設があり,奥越屈指の観光地となっている。南六呂師の郷所ケ原から唐沢を登り,池の大沢を経て約4時間半で山頂に達する。白山国立公園に入り,昭和43年の福井国体以来コースは整備され,登山者は多い。360°の大パノラマが楽しめ,特に眼下の大野盆地の眺望がすばらしい。

![]() | KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7092237 |