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鋸坂
【のこぎりざか】


祝言(のりと)坂,また中ノ坂ともいう。県の最北,坂井郡金津町の石川県境にある峠道。最高点の標高約80m,県境標高約70m。中世末期~近世の北陸道が細呂木(ほそろぎ)(金津町)から加賀国橘(石川県加賀市)へ通じ,江戸期,細呂木には福井藩の口留番所があった。祝言坂・中ノ坂の名の由来は不明であるが,鋸坂は改修前細呂木からの登り道が電光形の急坂であったからという。現在,蓮ケ浦(金津町)から細呂木へ越える小さな峠に,越後配流途上の親鸞の歌という「鋸坂をひき別れ身のなる果ては心細呂木」と刻んだ文政12年銘の石碑が残り,「名蹟考」以下の諸書は一方で鋸坂を国境の坂としながら,ここを鋸坂とする矛盾をみせる。先の碑をたて間違えたことから生じた誤りであろう。細呂木から観音川を渡って北へ進むと,橋屋のはずれの溜池の側で道が2つに分かれる。直進する良い道は吉崎(金津)へ通じる吉崎道で,鋸坂は右手へ尾根に登る急坂である。この取付あたりは荒れた道であるが,一息で尾根の上に出ると,ほぼ平坦な細い道が松林とチシマサザの下生えの中に明瞭に続いて県境に至る。「名蹟考」は北陸道の左右で国境が100間食い違うことを記すが,それは現県境にも引き継がれる。なお,石川県側へ下ると,道の左手はすぐ山中・山代ゴルフ場があり,右手にはブドウ園が新しく開かれて,旧景観は失われている。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7094388