福井藩
【ふくいはん】

旧国名:越前

(近世)江戸期の藩名。家門大藩。慶長５年結城秀康が越前一国68万石で入封して成立。秀康のあと忠直―忠昌―光通―昌親―綱昌―吉品（昌親再封）―吉邦―宗昌―宗矩―重昌―重富―治好―斉承―斉善―慶永（春嶽）―茂昭と，紆余曲折を経ながらも廃藩に至る。慶長６年入部した秀康はただちに知行割を行い，本多富正以下の重臣を領内の要地に配置するとともに，一般藩士にも知行地を与え，地方知行制を採用した。「源秀康公御家中給帳」によれば知行取（給人）は495人（御同代様分限帳では516人）で，その知行高は54万5,000石余にのぼり領知高の80％を超え，１万石以上だけでも11人22万石余（領知高の32.5％）であり，蔵入分が極端に少なかった。秀康は北庄城を改築し，城下町を整備してその地子を免除し，領国経営の基礎を固めた。慶長12年忠直が襲封し，同17年久世騒動といわれる御家騒動が起こったが，幕府の裁許によって父以来の老臣が処分されて，本多富正を筆頭とする家臣団が確立した。忠直は大坂の両陣で戦功をあげ，鳥羽野（鯖江市）を開くなど治績も少なくなかったが，「御国政不穏趣」が江戸に聞こえ，元和９年改易となり豊後へ流された。あとは弟の忠昌が寛永元年４月越後高田25万石から入ったが，兄の遺領のうち10万5,000石が３人の弟にも分与されて丸岡藩も成立し，敦賀郡が小浜藩に与えられたので，幕府目付島田治兵衛から受け取った。「郷村高辻帳」では領知高50万5,280石余（家譜），その郡ごとの内訳は，足羽郡９万745石余，今立郡９万564石余，吉田郡８万445石余，丹生郡８万1,217石余，南条郡２万4,343石余，坂井郡13万7,244石余，大野郡710石余であった（寛永11年徳川家光領知判物）。寛永12年木本領２万5,000石を預り，同14年にはそれが加増され53万280石余となったとも伝えるが（家譜），加増は２万石ではなかったかと思われる。忠昌は入封とともに北庄を福居と改め，法令を整え，年貢や交通の制度を整備し，正保元年には勝山３万5,000石を預り在番を派遣している。正保２年光通が52万5,280石余を継いだとき，松岡藩と吉江藩に５万石と２万5,000石を分知したので45万280石余となるが，「寛文朱印留」は両藩を含めた所領を足羽郡152村９万1,220石余，今立郡159村８万5,131石余，吉田郡114村７万7,328石余，丹生郡192村７万8,616石余，南条郡77村３万5,073石余，坂井郡261村14万144石余，大野郡69村１万7,767石余とし，計52万5,280石余，このうち45万280石余を光通分とする。光通のとき諸制度は一層整い，寛文８年には領内に73人の百姓代官を任じて小役運上を免じ，翌９年には量制を統一した。しかし財政難にも見舞われ，明暦元年からは旧勝山領の物成米を拝借することを願い，寛文元年には藩札を発行し，借知も恒常化している。また同９年の火災で天守などを含めて城下の大半が焼失した。光通のあとは昌親が吉江から入って47万5,280石余となるが，次の綱昌の貞享３年22万5,280石が没収されて幕府領となり，吉品（昌親再封）が25万石を与えられた。これを貞享の半知という。領知高が半減したので松平家の家格は下り，知行取だけでも188人に暇を出したが，放たれた者の知行・扶持米は計12万5,700石余にのぼり，残った者も知行を半分に減らされた。これによって所領は，足羽郡が福井庄町・石場町・石場畠方・松本町・城橋町・勝見・福居庄町外・三橋・下馬・下四居・米松・渡・北四居・飯塚・明里・境・大瀬・角折・水越・菅谷・深谷・下市・金屋・東下野・若杉・西下野・加茂河原・小山谷・門前・久喜津・福・島・合谷・南居・南江守・大島・三尾野・花守・中・下江守・舞屋・種池・淵・西谷・中野・冬野・杉谷・安保・引目・板垣・木田・山奥・花堂・江端・今市・中荒井・下荒井・浅水・浅水二日町・三十八社・上江尻・下江尻・東郷・淵上・和田中・西方・和田出作分・和田東・稲津・篠尾・荒木新保・栂野松成・合島・成願寺渡・荒木・成願寺・高田・福島・大谷・前波・高尾・宿布・椙谷・品ケ瀬・朝谷島・堺寺・奈良瀬・別所・市波・田尻・東新町・西新町・城戸内・安波賀中島・安波賀・蔵作・西天田・東天田・小和清水・朝谷・小宇坂・鹿俣・西東大味・栃泉・深見・田中（岩倉共）・上河北・下河北・半田・太田・徳尾・角原・生野・細江上下・天王・二上・帆谷・新保・北山・西袋・大・生部・徳光・主計中・森行・三本木・末広・鉾ケ崎・大土呂・大町・別所・上莇生田・下莇生田・上六条・下六条・小稲津・中島・円城寺・下東郷・下毘沙門・脇・南山・小路（安原共）・中毘沙門・上毘沙門・三万谷・浄教寺・小宇坂島・獺ケ口村の９万23石余（ほかに改出899石余），吉田郡が大和田・高柳・重立・高木・新保・開発・舟橋・郡・寺前・舟橋新・幾久・町屋・大願寺・灯明寺・土橋・上里・福万・祇王三郎丸・重藤・堀宮・経田・牧野島・八島・上中・下中・海老介・地蔵堂・安竹・上伏・黒丸・別所・三屋・西堀・河増・北今泉・東今泉・丸山・寮・原目・殿下・印田・北野上下・曽万布・岡保・印内猪谷・野中小畑・下吉野・京前・市野々・岩野・北野・野中・藤巻・堅立・舟橋渡り・山室・高屋・六日市・二日市・天池・勝見・鷲塚・網戸瀬・古市・下・八重巻・中角・栗森・寄安・下森田・石森・漆原・川合新保・上野・上森田村の５万9,895石余（ほかに北野村新田1,175石余・改出119石余），坂井郡が北菅生・長橋・糸崎・松影・蓑・和布・免鳥・浜住・大窪・小橋屋・川尻・波寄・菖蒲谷・岸水・四十谷・田谷・市王寺・荒谷・荒井・中・燈豊・大年・為寄・中山・田頭・領家・島・深坂・石畠・小幡・布施田・高須・小尉・浄土寺・砂子田・内山梨子・池尻・市瀬・黒丸・水切・串野・砂子坂・小野・木下・三宅・仙・天菅生・御所垣内・江上・島山梨子・大谷・佐野・上野・中野・楢原・東平・清水平・河内・柿谷・木米・中河内・奥平・八幡・足谷・猫瀬・中平・新保・高江・石新保・別所・大橋屋・西畑・弐ツ屋・白方・磯部新保・伏屋三本木赤坂・権世市野々・権世・乗兼・浜坂・宇随・橋屋・檜山・柿ケ原中・宇根・市野々・熊坂・柿ケ原・山竹田・細呂木・蓮浦・漆原出作・長崎・南金津・金津新・北金津・北方・吉崎・三国・三国宿・米ケ脇・山岸・泥原新保・豊原村の３万8,283石余（ほかに改出109石余），今立郡が定友・池泉・五分一・北小山・東小山・島・大滝・岩本・不老・新在家・樫尾・粟田部・稲寄・長土呂・押田・帆山・矢舟・清水頭・千僧供・北・矢放・五郎丸・瓜生・長泉寺・村国・上鯖江・北野・小黒町・水落・鳥羽・田所・上河端・大正寺・南井・大野・四方谷・別所・吉谷・松成・落井・乙坂・磯部・三嶺・中村の２万9,501石余（ほかに改出279石余），丹生郡が印内・下太田・新保・沢・芝原・太井・牛房平・土山・青野・茗荷・笈松・大屋・風尾・畠中・謡谷・茱崎・大味・向山・清水畑・更毛・本堂・羽坂・安田・恐神・杉本・印内・入・西番・牛屋・糺・南菅生・大丹生・蒲生・上海・下海・宿・米・新保・上山中・下山中村の１万2,285石余（ほかに改出11石余），南条郡は府中町地子・下平吹・北府・中平吹・上市・府中町外・大門河原・常久・松盛・行松・宇津尾・八飯・広野・橋立・板取・二ツ屋・新道・帰・今庄・湯尾・別所・鯖波・脇本・今宿・国兼・印内・中・温谷・瓜生野・四郎丸・岡本・奥野々・上広瀬・下広瀬・甲楽城・赤萩・河内・具谷・湯谷・大郎・大谷・河野・今泉・平出・高瀬・三口・甲楽城八田・上平吹・荒井・孫谷・大桐山中村の２万11石余（ほかに新田110石余・改出289石余）となり，享保６年松岡藩を合わすまで大野郡から所領が消滅した。このほか判金３枚・金17両余・銀239貫余・米１万5,139石余・綿１貫余・奉書紙110束余・鳥子紙120枚・蝋燭240挺・塩80石余・油４石余・荻218束・萱261束・糠４万3,193俵・藁13万6,703束・大豆７石余があった。吉邦の享保５年には幕府領のうち10万3,834石余をもって正式に福井藩預り所が成立し，翌６年宗昌が松岡から入って30万石となった。預り所は宗矩の元文元年17万石を超えて最高となり，その後減るものの幕末まで数万石を預っている。文政元年治好のとき，坂井郡のうち横越・米納津・黒目・下野・折戸・池見・定広・辻・姫王・正善・取次・安沢・中庄・上小森・下小森・大牧・堀越・島・油屋・楽円・藤沢・玉江・野中・野中新・西長田・千歩寺・松木・本堂・藤瀬・西野中・円納・布施田新・東・公文・宮前・角屋・西今市・水居・布目・西方寺・河間村の41村２万石が加増されたが，同３年これらは上知されて預り所となり，代わりに丹生郡のうちから鮎川・牛越・横山の３村656石余，坂井郡では西方寺・蛸渡・大味・下兵庫・西太郎丸・東太郎丸・随応寺・中筋・北横地（1,466石余中1,266石余）・大針・鷲塚・東長田・徳分田・上新庄・下新庄・蔵垣内・西・上関・新用・馬場・東善寺・中番・下番・玉木・竹松・十楽・田中々・番田・重義（521石余中260石余）・横垣・国影・加戸・西谷・高塚・青野木・矢地・御簾尾・北野・前谷・椚・鎌谷・清滝・後山・川上・南疋田・城（新田共）・安島・崎・西長田村（1,547石余中946石余）の50村３万5,547石余，吉田郡で光明寺・山王・藤巻村の３村1,194石余，計３万7,399石余（加増２万石・込高１万7,399石余）が代知として与えられ，合わせて７郡675村32万石となって廃藩に至った。貞享の半知は福井藩にとって大きな打撃であった。新地開運上課役掛物などが計30万石に及び，「年貢所納四ツヨリ六ツ四五分迄，抨シ五ツ五分，米能く生ジ払いよし」（土芥寇讎記）とみたものもいるが，内実は必ずしもそうともいえず，この頃から町在への御用金賦課が始まり，また商人からの借金もかさみ，天保７年には「古借新借惣高九拾万両」に及んだと伝える。寛延元年，明和５年には蓑虫騒動といわれる百姓一揆が起こった。特に後者は最高２万人が城下に乱入して打毀を行い，要求の多くを認めさせ，家老や奉行14人が処罰された。天保８年飢饉による大きな被害を出したあと，同９年慶永が襲封し，側近を登用して藩政改革を行うとともに慣例を破って幕政にも参画した。安政５年将軍継嗣問題や対米条約問題で井伊大老に敗れ「隠居急度慎」に処せられ，あとを茂昭に譲ったがなお藩政への影響力は失わず，文久２年には政事総裁職として幕政に復帰した。茂昭は元治元年第１次長州戦争に副総督として出兵，明治２年福井藩知事となる。戸口は寺社を含む町在人口が元文３年15万1,140（男７万7,676・女７万3,464），宝暦６年14万8,498（男７万6,446・女７万2,052），安永３年14万8,115（男７万7,610・女７万505），天明５年17万6,396，文化７年15万46（男７万8,363・女７万1,683）。弘化４年には領内全人口17万5,521人，うち武士が１万4,904（国許士分7,448・その他6,722・定府734），町在15万8,385（福井町中１万9,781・坂井郡３万9,824・足羽郡２万6,248・吉田郡２万3,407・丹生郡１万4,924・今立郡１万3,745・南条郡１万9,262・大野郡1,194），寺社分2,232であった。「藩制一覧」によれば，草高33万6,194石余，ほかに朱印地100石と除地694石余が領内にあり，正租米10万9,414石余，雑租米3,221石余，雑租金銭として奉書紙230貫文・牛房種１貫文余・切石砥石10両・鎌および菜切３貫文余，戸数６万6,384（士族887・卒族1,439）・人口28万4,935（士族4,819・卒族7,326）。明治４年福井県となる。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7094804