里山辺
【さとやまべ】

旧国名:信濃

美ケ原高原東麓，田川支流薄川が山辺谷入口の前面に形成した扇状地に位置する。地名は，入山辺と並んで近世初頭から見えており，その由来は古代の山家郷（和名抄）に発し，山辺谷の入口から山間部を入というのに対し，谷前面の平坦部集落地帯が里として区別されたものという。古代以来，貞観叙位（三代実録）の古社須々岐水神社（通称薄宮）とのかかわりを特色としてきた地域で，８か村協力の例大祭において，各村が祭舞台を曳く「お船祭り」が今でも維持されている。昭和61年に保存９舞台（現９町会による）全部が県宝指定を受けた。また湯ノ原温泉は，古代の「束間温湯」や「自糸の湯」に当たるとの説が有力（信府統記・近世大名領の研究）。考古学的にも興味深い土地で，薄町付近の針塚遺跡再葬墓群（弥生前期）や針塚古墳群（５世紀）がある。中世では，桐原荘・山家郷に拠る山家氏の支配を受けたものとみられ，やがて林大城（金華山城）による信濃守護小笠原氏の直接支配下に組みこまれ，次いで甲斐武田氏の侵入を受けた。
【里山家村(近世)】　江戸期の村名。
【里山辺村(近代)】　明治８～22年の村名。
【里山辺村(近代)】　明治22年～昭和29年の東筑摩郡の自治体名。
【里山辺(近代)】　昭和29年～現在の松本市の大字名。

KADOKAWA 「角川日本地名大辞典」 JLogosID : 7100941