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万野風穴
【まんのふうけつ】


富士山西南麓の富士宮市山宮にある長さ570mの溶岩トンネル。この風穴は,山宮にあるが,万野風穴と呼ばれている。山宮・万野原新田の境付近にあって,昔はこの付近一帯を万野ツ原(まんのつぱら)と呼び,富士の広大な裾野を意味した点に,地名の由来をしることができる。万野風穴は,三ツ池風穴(同市人穴(ひとあな)にある長さ750mの風穴)に次ぐ規模を誇り,洞内には溶岩鍾乳洞もあり,岩漿の流路もしることができる貴重な風穴で,大正11年御殿場の駒門(こまかど)風穴とともに,国天然記念物に指定,この風穴は,古くは大日穴(だいにちあな)と呼ばれ,天然記念物指定以後の大正末期頃,誰とはなしに万野風穴というようになり,今日に至る。富士山は,数多いわが国山岳信仰の代表的な山で,富士山の噴火や溶岩トンネルは,人々に恐れられた存在であった。こうしたことから,風穴は富士講と結び付き,宗教的色彩をもつ名称の風穴が多い。かつて大日穴と呼ばれていた時代には,この洞内に大日如来が安置され,多くの人々が修行をつんだという。第2次大戦後,大日如来は取り除かれて,最近では洞内は地下水が漏れ,足場が悪く,洞内整備が望まれている。富士山麓の風穴は,北麓の山梨県側と,西麓の人穴周辺および西南麓の万野周辺に集中し,これらの風穴は,ほとんど溶岩の差動的流出によって作られた空洞で,地下で空気が冷やされるため,冷風が吹き出している。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
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