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矢ノ川
【やのこ】


「やのかわ」ともいう。高峰山(標高1,044.8m)と八鬼(やき)山の間の谷を流れる川。2級河川。第三紀に噴出した熊野酸性岩類の中心をなす黒雲母花崗斑岩の山体に,深い渓谷を刻んで流れ,尾鷲湾に注ぐ。支流に,岡ノ川・真砂川・三田谷・陰谷・伝唐(でんがら)谷・南谷・古和谷・主ケ谷などがある。河口までの本流4.1kmと真砂川下流0.7kmは2級河川に指定されているが全流長や流域面積の公式計測は未了。「やのこ」は矢のような急流の川の意といわれる。「川」を「こ」と読むのは古称で,この地方に限ったことではない。当川流域の山地は,中井浦・堀北浦・南浦・林浦・野地村・向井村・矢浜村・天満浦・水地浦の尾鷲九ケ在入会の立会山という形の共有林域南部にあたり,荘園遺制が近世に存在したものといわれる。南谷と陰谷との合流点にある標高200m程度の地165m(^2)には,暖帯林があり,タキミシダなどの繁殖する県天然記念物陰谷樹叢。この付近から当川源流部は国有林で,天然記念物を除く流域の全森林は尾鷲材として育成されるが,水源涵養と山地災害防止機能をも兼ねている。尾鷲浦から当川本流の谷筋を通り,伝唐谷を登って矢ノ川峠を越える道は大又道・本宮道と呼ばれ,享保11年に幕府の薬草調査役人が通った記録がある。明治13年熊野街道の八鬼山越えは伝唐越え・矢ノ川峠越えに変更されたが,伝唐越えは難所であったため,同21年には二ッ木屋―大橋―七曲り―小坪―矢ノ川峠をルートとする幅員6尺の車道が完成,尾鷲と木本を結んだ。大正11年からは乗合自動車も運行した。大橋~小坪間は危険であったため,昭和2~11年には安全索道が利用された。同11年には南谷経由の道が完成。同28年国道170号となり,同34年には国道42号となった。同43年矢ノ川新道が完成し,尾鷲・木本間の所要時間は大幅に短縮された。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7129744