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磯砂山
【いさなごやま】


伊去奈子(いさなご)嶽・磯砂カ嶽とも書き,比治山(比沼(ひじ)山)・真名為(まない)岳・足占(あしうら)山ともいう。中郡峰山町南部と大宮町西部の境にある山。標高661m。久次(ひさつぐ)岳・磯砂山系の総称でもある。山名の由来については諸説あり,「丹後旧事記」には「一山四名の地にて丹波郡なり。比治山,足占山,磯砂山ともいふ。豊宇賀能売命天降の記に見るべし。又,比沼山はこの郷の山惣名なり。比治山は真名為といふ池の有なり。足占山は天女宇賀能売命の行衛をしたふの故を以つて名付しなり。風土記元々集に委し,磯砂山は笛原寺の山号にて四名由来一山なるが故に斯伝ふ」とある。当山は「比治の天女」降誕の地とされ,比治山伝説(天女伝説)として現在に伝わる。その天女が豊受大神とされ,天女が辿った所には,豊受大神を祀るという奈具神社・比沼真奈為神社などがある。また,天道日命らが,伊去奈子嶽に天降っている豊受大神に五穀・桑蚕の種を授かり,真名井を掘り,水を汲み上げて田畑を造り,植えたといい,わが国の稲作発祥の地ともされる。現在,比治山伝説にまつわる地名が峰山町・大宮町に数多く残る。真名井は当山東側の常吉登山路の6合目から約300m南にある女池(めいけ)をさすが,現在は泥沼になっている。この真名井の水に発した真名井の滝は,かつて領内第一の滝といわれ,一の滝・二の滝・三の滝・四の滝・五の滝と5段に分かれる高さ数十丈の瀑布であったが,現在は水量が少なく,真名井とともに見る影もない。峰山町字二箇(にか)には初めて稲を植えたという大苗代(だいじようご),伊勢へ初穂を献上した月の輪田,籾を水に浸した清水戸(せいすいど),宮跡馬場という稲代谷などがある。天女伝説は山麓の大呂集落では「七夕伝説」として庶民化されており,毎年7月7日に祭祀を行う。磯砂山登山口は大萱・茂地・大成・常吉があるが,明治期以前は女人禁制であったという。この山にちなんだ歌としては,和泉式部に送った権中納言定頼の「行きゆかすきかまほしきはいつ方に跡定むらん足の占山」(続古今集),与謝野晶子の「人ありて比治の木の間に誘ふとも留るなかれ五月の霧よ」が名高い。




KADOKAWA
「角川日本地名大辞典」
JLogosID : 7136408